三角関数 1
三角関数とは
三角関数は、直角三角形のある角に対する各辺の比を表すものです。
各辺の比とは、ある辺の長さを別の辺の長さで割り算したものです。
ここで、直角三角形の直角以外の角度が決まっていれば、
各辺の比は直角三角形の大きさに関係なく決まることに注意してください。
そんな辺の比をとって何の役に立つのでしょうか。
役に立つというよりも、数学や物理の世界では無くてはならない存在です。
もちろん、CG の世界においても三角関数が無ければ CG のソフト自体が作れません。
なぜなら、2 次元や 3 次元の仮想世界で長さ・角度・座標値などを求めるときに必要な道具だからです。
角度の単位
- 度 degree
- 円周を 360 等分して、等分された一つの角を 1 度とする単位です。
度数で角度を計ることを度数法と呼びます。
Maya のアトリビュートではデフォールトで度が単位になっています。
- ラジアン radian
- 扇形の弧が半径に等しいときの角度を 1 ラジアンとする単位です。
円周は 2π ラジアンになります。
ラジアンで角度を計ることを弧度法と呼びます。
物理・数学・工学などでは計算に便利なラジアンがよく使われます。
度数とラジアンを変換するには以下の式を使います。
2π ラジアン = 360 度
から
1 ラジアン = 360 / 2π = 180 / π 度
1 度 = 2π / 360 = π / 180 ラジアン
Maya では、以下の MEL コマンドを使っても変換が可能です。
- rad_to_deg
- ラジアンから度数へ変換
(使用例)
rad_to_deg 3.14
// Result: 179.908749 //
- deg_to_rad
- 度数からラジアンへ変換
(使用例)
deg_to_rad 360
// Result: 6.283184 //
三角関数の定義
三角関数は、直角三角形のどの辺と、どの辺との比をとるかでいろいろな種類があります。
主な三角関数の定義を 3 種類、以下に挙げておきます。
(辺 C と、辺 A のなす角度を α としています)
- sin (正弦)
- 辺 B の長さを、辺 A の長さでわったもの
sin(α) = B / A
- cos (余弦)
- 辺 C の長さを、辺 A の長さでわったもの
cos(α) = C / A
- tan (正接)
- 辺 B の長さを、辺 C の長さでわったもの
tan(α) = B / C
当たり前のことですが、辺 A の長さが同じならば、
角度 α が変化したとき、辺 B と辺 C の長さが変わって、各三角関数の値も変化します。
逆に、角度αが同じならば辺の長さが変化しても、各三角関数の値は変化しません。
三角関数による計算例
- 三角関数によって直線を縦・横の 2 方向に分解できます
三角関数が辺の比になっていることによって、
長さと傾きが分かっている直線の頂点の位置(座標値)がわかります。
以下のように長さが A で、X 座標との角度が α の直線があった場合に、
座標値 (x, y) はいくらになるでしょうか。
(sin(α)、cos(α) の値はあらかじめわかっているとします)
下図のように、点から垂線(X 軸に垂直になる直線)をおろしてみると、
X 座標が定義の B の部分、Y 座標が C の部分にあたることが分かります。
ゆえに、
cos(α) = C / A = x / A
sin(α) = B / A = y / A
ですから、
cos(α) = x / A
sin(α) = y / A
両辺に A を乗算して、
x = A * cos(α)
y = A * sin(α)
となります。
三角関数の歴史
- 約 4000 年前
古代メソポタミアで三角法の考え方が発見されました。
- 約 2000 年前
ギリシャで弓の弦の長さを求める問題に、三角法の表が作られました。
- A.C.510 アリヤバーター Aryabhatiya に半分の弦 ardha-jya (jya-ardha)として
正弦 sin の考え方が書かれました。
- ardha-jya がアラビアに jiva として伝わりました。
アラビア語で jiva は湾を表し、jaib と発音されました。
- その後、ヨーロッパに伝わり、ラテン語で湾を表す sinus となりました。
sinus が sine と表記されるようになります。
余弦 cos は、このころ co.sinus と表記されていました。
後にジョン・ニュートンが co.sinus を cosinus と表記しました。
- A.C.1642 イギリスのエドムンド・ギュンターの著作で初めて sin が使われました。
- A.C.1674 ジョウナス・モアーが cosinus を cos と表記しました。
- 正接 tan はデンマークのトーマス・フィンケが tangent と表記したのが初出です。
この語はラテン語で触れることを表す tangere からきています。
円の一周が 360 度というのは古代バビロニアで決められたらしいのですが、
正確な起源は不明です。
degree (度)という単位はギリシャ語のμοτρα(moira)がアラビアに渡って daraja となり、その後、ラテン語の de gradus から degree になりました。
radian (ラジアン)はジェイムス・トンプソンによって A.C.1871 に考えだされました。
参考
Prev | Next
Home | Contents
Mail